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大 前 〓*
Tsutomu OHMAYE*
Process, catalyst, and reaction mechanismfor vinyl acetate synthesis have been reviewed.
Progress and improvementare discussed in the followingsections,
(1) acetylene-based process, (liquid- and vapor-phase)
(2) ethylene-based process, (liquid- and vapor-phase)
(3) carbon monoxide-basedprocess,
and, as additional item,
(4) newer ethylene synthesis from methane comprised in dry natural gas.
酢 酸 ア ル カ リ と遷 移 金属 と を助 触 媒,シ リカ を担 体 とす
1. は じ め に
る。
酢 酸 ビ ニ ル の製 法 は1912年,F.Klatteが アセチ レン c) エ チ リデ ンジ ア セ タ ー ト(略号EDA)法
と酢 酸 とか らの エ チ リデ ン ジ アセ ター ト合 成 時 の副 反 応
と して発 見 したの に始 まる 。 以 来 下記 の諸 製 法 に次 々 と (3)
推 移 して き たの で あ る。 液相 プ ロ セ ス は触 媒 に芳 香 族 ス ル ホ ン酸 を用 い る 脱 酢
a) ア セチ レ ン法 ち な み に,エ チ リ デ ン ジ ア セ タ ー トの 合 成 法 に は
2. ア セ チ レン法
(2)
酢 酸 に対 す る エ チ レ ンの 脱 水 素 的(ま たは 酸化 的)ビ ニ 1913年 ∼1969年 の 間,世 界 的 に主 流 を 占 め た 製 法
ル化 と も,エ チ レ ンに対 す る酢 酸 の オ キ シ ・アセ トキ シ で あ っ た が 最 近 で は 全 世 界 生 産 約200万 ト ン/年 の10
ル化 と もい え る。 液 相 プ ロ セ スの 触 媒 は塩化 パ ラ ジ ウム %以 下 に減 退 して しま っ た。 そ の 主 因 は原料 アセ チ レ ン
を主触 媒,酢 酸 ア ル カ リを助 触 媒(ま た は促 進 剤),塩 化 の コ ス ト高 の た めで あ っ て,技 術 的 原 因 で は な か った 。
銅 と酢 酸銅 とを レ ドック ス触 媒 とす る。 気 相 プ ロセ ス の
触 媒 は 金属 パ ラ ジ ウ ム また は酢 酸 パ ラ ジ ウ ム を主 触 媒, (4)
) )
691
692 有機 合 成 化 学 第45巻 第7号 (1987) (70)
空 間速 度(反 応 液 体 積 に対 し)1500hr-1,触 媒系 は酸 に吹 き込 む。 これ に よ り生 成酢 酸 ビニ ル は蒸 発 で追 い
化 第 二 水 銀2.5%に 硫 酸 ま た は リン酸 を添 加, 出 し冷 却 管 で 凝縮 捕 集 す る 。廃 触 媒 は塔 底 か ら ス ラ ッ
○反 応 成 績;触 媒 の1ラ イ フサ イ クル の 生 成 合計 量 は, ジ と して 取 り出 して,ば い焼 して酸 化 第 二水 銀 と して
硫 酸 水 銀 系 触 媒 で は110∼80kgVAc/kgHgOで あ り, 回 収 す る 。 こ の プ ロ セ ス の フ ロ ー シー トを図1に 示
リ ン酸 水 銀 系 触 媒 で は14∼12kgVAc/kgHgO,で あっ す。
た。 酢 酸 の 反 応 率;66∼72%,酢 酸 の 選 択 率;硫 酸
レ ンを170℃ で酢 酸 亜 鉛 含 有 の 酢 酸 と反 応 させ る際 に, grVAc/1-hrを 得 て い る。
ピ リ ジ ンか ジ メチ ル アニ リ ンの よ うな ル イ ス塩 基 を添 加 2.2. 気 相 プ ロ セ ス1,2.5) 1940年 以 降,30年 間
で あ って 触 媒 の作 用 機構 の研 究 目的 に 実験 され た の で あ ク ラ レ,日 本 合 成,DuPontの 三 社 に よ り 工 業 化 さ れ,
る。 各 種 置 換 ベ ンゾ フ ェ ノ ンに5%量 の酢 酸 亜鉛 を溶 か そ の 他 も殆 ん ど こ れ に 転 換 し た 。
し,220∼240。Cの 加 熱 下 に アセ チ レ ン と酢 酸 の混 合 蒸 ○触 媒;酢 酸 亜 鉛20∼30部 を 活 性 炭100部 に担 持 させ
(71) 酢 酸 ビニ ル製 法 の過 去,現 在, そ して 将 来 693
間 速 度200∼400hr-1,反 応 圧 力 は常 圧 。 ア セ チ レ ン290∼310m3(340∼364kg),酢 酸
○ 反 応 成 績;触 媒 の 寿 命1,000∼1,500hr,反 応 率 酢 730kg,活 性 炭3∼4kg,酢 酸 亜 鉛2kg。
気 相 法 の 特 長 は1)連 続 反 応 で あ るか ら長 期 間 の 定 常 に酢 酸 に対 す る アセ チ レ ンの ビニ ル化 に よ り酢 酸 ビニ ル
運 転 が 可 能 で 自動 化 も容 易,2)触 媒 は廉 価 な 亜 鉛 に 転 を生 成 す る とい う,こ の反 応 の主 触 媒 は第2b族 の遷 移
換 。3)逐 次 副 反 応 が 抑 制 され てEDAな どの 副 生 減 少 。 金 属 イ オ ン に限 られ て い る 。
4)従 っ て選 択 率 が 大 幅 に向 上 し,モ ノマ ー 品 質 も良好 。 こ れ の反 応 機 構 はそ れ らの 金属 イ オ ンに ア セ チ レ ンが
この気 相 法 を更 に 固定 触 媒 式 か ら流 動 触 媒 式 に改 良 し π錯 体 的 に配 位 結 合 し,次 い で σ錯 体 に転 移 し,そ して
た こ と に よ り,触 媒 層 内 の 温 度 分 布 均 一 化 → 反 応 温 度 分 解 して酢 酸 ビニ ル を生 成 す る もの で 液相,気 相 の両 プ
10∼20℃ の 低 下 設 定 が 可 能→ アセ チ レ ン重 合 物 の 減 少 ロ セ ス とも に普 遍 的 に適 用 され る機構 で あ る2,4,6,7)。
→ 触 媒 寿命 の延 長 とモ ノマ ー と して の 品質 向 上 → スペ ン そ の反 応 機 構 を図3に 示 す 。
ト触 媒 が 固結 せ ず ス ム ー ズ に取 り出せ る,な どの 波 及 効 な お こ の錯 体 の 形 につ い て は研 究 者 に よ っ て小 異 が あ
果 と利 点 が加 わ った 。 逆 に二 つ の問 題 点,即 ち触 媒 の 摩 っ て[H2C=CH-Zn-(OAc)3]2-の4配 位 型7)の 説 もあ
粍 損 失 と触 媒層 吹 き抜 け の トラ ブ ル が現 わ れ た。 前 者 は る が,ア セ チ レ ンー亜 鉛(ま た は水 銀)塩 錯 体 を経 由 す る
ヤ シ殻 系 の よ うな硬 質 活性 炭 に よ り,後 者 は多 孔 オ リフ とい う大 筋 で は一 致 して お り古 川,大 塚 の機構 説 と稻 し
ィス板,多 孔 焼 結 金属 板,多 孔 質 セ ラ ミ ック板 な ど を塔 得 る。
底 ガ ス吹 き込 み 口 に使 用 して い ず れ も解 決 済 み と な って な お 図3の 機 構 は他 の ビ ニ ル化 反 応 に も当 て は め 得
いる。 る も ので あ って,例 えば 酢酸 亜 鉛 の代 りに塩 化 第 二 水 銀
2.3. ア セチ レン法 の反 応機 構 以上述べ た よう と し,酢 酸 の 代 り に塩 化 水素 とす れ ば,即 ち ア セチ レン
694 有機 合 成 化 学 第45巻 第7号 (1987) (72)
3. エ チ レン 法
エ チ レ ンか らの酢 酸 ビニ ル合 成 法 の 発 見 は1960年 に
π - COMPLEX
1.1.Moiseevら が,エ チ レ ン法 ア セ トア ル デ ヒ ドの合 成
反 応 に お い て反 応 剤 の 水 の 代 り に酢 酸 を用 い,且 つ酢 酸
ナ トリウ ム を添 加 した と ころ,酢 酸 ビニ ル が次 の式 の よ
う に生 成 した こ と に始 まる10).
σ - COMPLEX
(10)
そ して この 還 元 され た 金属 パ ラジ ウ ム を効 率 よ く酸 化
して,高 活 性 の触 媒 に す る こ とに 関 して激 しい 開発 競 走
が 行 われ たの で あ る11∼13)。そ の結 果ICI11),Hoechst12),
Fig. 3 Reaction mechanism of acetylene-based vinyl
acetate process. 日本 合 成13)の 三 社 が そ れ ぞ れ 独 立 に次 式 の 一段 酸 化 の
法 の塩 化 ビニ ル の生 成 機 構 とな る。 ま た触 媒 を硫 酸 水 銀
と し,酢 酸 の代 りに水 とす れ ば ビ ニ ル ア ル コ ー ル経 由 の (11)
アセ チ レ ン法 ア セ トア ル デ ヒ ドの機 構 と な り,い ず れ も エ チ レ ン法 アル デ ヒ ドの場 合 と異 な り,Wackerプ ロ
同 類 の 錯 体 的 中 間 体 を経 由 す る反 応 機 構 で 統 一 され 得 セ ス の よ う な 二 段 酸 化 法 が特 許 文 献 に は現 わ れ て い る
な お これ らの錯 体 に類 す る ビニ ル水 銀 の酢 酸 エ ス テ ル 気 相 プ ロ セ ス も 同 様 一 段 酸 化 法 に よ りBayer14),
が ジ ビニ ル水 銀 と酢 酸 か ら合 成 され 且 つ 単 離 さ れ て お National Distillers15)の二 社 が 無 レ ド ック ス 触 媒 系 で 開
り,こ れ を加 熱 す る と酢 酸 ビニ ル と金 属 水 銀 に分 解 す る 発 に成 功 した。
との 報 告 が あ る8)。亜 鉛 で は 不 安 定 で 単 離 さ れて い な い (式11)の 反 応 の 主 触 媒 は 第8族 の 白金 族 元 素 に 限 ら
が。 れ て お り,中 で もパ ラ ジ ウ ムの 活 性 が 最 もす ぐれ て い て
そ の 活 性 種 は2価 の カ チ オ ン状 態 で あ る。 助 触 媒 は酢
(5) 酸 を ア ニ オ ン化 す る金 属 元 素 が い ず れ も有 効16,20)だ
が,中 で も ア ル カ リ金 属 酢 酸 塩 の 活性 が す ぐれ て高 い。
(6) 液 相 プ ロ セ スで は主 反 応 サ イ クル で 還 元 され た金 属 パ
(7) た。
(8)
(12)
(9)
亜 鉛 塩,水 銀塩 が ル イ ス酸 と して酢 酸 分 子 の イ オ ン化
を促 して プ ロ トン を発 生 し,こ れ が ア セ チ レ ンに付 加 し 気 相 プ ロ セ ス で は次 の(式13)の よ う に レ ドッ ク ス触
て ビニ ル カチ オ ン とな り,そ れ に酢 酸 ア ニ オ ンが 反 応 し 媒 は不 要 で 酸 素 が 直 接 金 属 パ ラ ジ ウム(Pd°)を再 酸 化 す
て酢 酸 ビニ ル を生 成 す る とい うの で あ る。 る。
具 体 的 に 云 え ば パ ラ ジ ウ ム1kgの 消 費 に 対 して 酢 酸 ビ ニ 1,000∼3,000molに 懸 濁 又 は溶 解 させ る 。塩 素分 は徐
ル450tの 生 産 性,即 ち パ ラ ジ ウ ム の1g-atom当 り55 々 に 消 粍 す る か ら 塩 化 水 素 の 注 入 に よ り補 給 す る 。
以 上 と相 当 な 高 水 準 の 触 媒 効 率 が 工 業 化 の た め に 必 要 と mol/Pdg-atom・hr,酢 酸 ビ ニ ル:ア セ トア ル デ ヒ ド
3.1. 液 相 プ ロ セ ス17,19,20) 択 率 は 酢 酸 ビ ニ ル と ア セ ト ア ル デ ヒ ドの 合 計 量 に対 し
○ 反 応 器;ガ ス 連 続 吹 き込 み 式 の 気 泡 塔 ま た は 液 柱 ガ ス エ チ レ ン は90%,酢 酸 は95%以 上.副 生 物 は 二 酸化
伴 な わ れ る蒸 発 捕 集 に よる 。
給 能 力 は酢 酸 を リサ イ ク ルす る ポ リ ビニ ル アル コー ル の ム.助 触 媒 は 酢 酸 ア ル カ リ(特 に カ リ ウ ム ま た は セ シ
なお,国 内 で 唯 一 の 液相 プ ロセ ス の工 場 で あ っ た徳 山 ∼1
,000g-VAc/1-cat・hr,TurnOverNumber80∼
石 油 化 学 の 反応 器 は1/8inch厚 さの チ タ ン張 りで,直 径 180mo1-VAc/Pdg-atom・hr,反 応転化 率 エチ レン
3.3m,高 さ約20mの 反 応 塔 で あ っ た 由19)。1968年 春 10∼15%,酢 酸20∼30%,酸 素70∼80%,選 択率
よ り稼働 開 始 し翌 年 春 に は腐 食 に よ り反 応 ガ スが 洩 れ て エ チ レ ン90∼95% ,酢 酸98∼99%
爆 発 事 故 を起 し,一 且 は復 旧 した が1971年9月 に操 業 ○ 副 生 物 の 副 生 率(消 費 エ チ レ ン に 対 し);二 酸 化 炭 素 は
複 雑 で 精 密 な構 造 の 多管 式 反 応 器 に よ り固 定 触 媒 の 除 して い る。
熱 促 進 を計 ら な け れ ば な ら な か っ た 。2)反 応 ガス を 3.3.2. 高 活 性 触 媒 の 開 発 こ の気 相 プ ロ セ ス が 工 業 化
150。C以 上 に予 熱 して酸 素 を爆 発 限界(例 え ば8.74atm, さ れ た後 も貴 金属 触 媒 の宿 命 と して更 に高 活 性 化 へ の追
gauge.で7Vol%)近 くの濃 度 に 混 合 す る か ら爆 発 の 危 険 求 が 続 け られ た 。 そ の 最初 の試 み は金 属 パ ラ ジ ウ ム ま た
が 大 き い。 事 実1978年,DuPont社 の 年 産15万 トンの は酢 酸 パ ラ ジ ウム を多孔 性 担 体 粒 子 の表 皮 層 に集 中的 に
プ ラ ン トが爆 発 し,半年 以 上 操 業 停 止 した事 故 が あ っ た。 担 持 させ て,そ の粒 子 の 中心 部 分 に は担 持 させ な い よ う
触 媒 の 減 活 原 因 とそ の 対 策 と して は1)ア ル ミナ 系 な構 造(略 して ス キ ン付 け)の 触 媒 に よ り空 時 収 量 を
の 担 体 で は酢 酸 に よ り腐 食 さ れ て多 孔 性 が 崩 れ る ため の 300g/1・hrま で 向 上 させ た 事 に 始 まる27,28)(1967)。
活 性 減 退 が さけ られ な い。 耐 酢 酸 性 の シ リ カ,チ タニ ア この 方 法 によ る触 媒 高 活性 化 が益 々 エ ス カ レー ト して,
な ど の担 体 に 替 え る こ とで 解 決 。2)パ ラジウム分の凝 パ ラ ジ ウ ム と金 の 合 金 を ス キ ン付 け した 触 媒 に よ り
ン系,無 銅 系 で あ って も気 相 中 の酸 素 が 担 体 上 に分 散 し
た金 属 パ ラ ジ ウム の微 粒 子 を直 接 酸 化 し得 る こ と を示 し
た もの で あ る 。 この金 属 パ ラ ジ ウ ム系 触 媒 に よる 気 相 プ
ロ セ ス はBayer,Hoechst,Knapsack三 社 の協 同 開
(1966年)。
他 方H.Ferrnholzら(Hoechst社)26)は 酢 酸 パ ラジ ウ
ムー酢 酸 カ ド ミウ ムー酢 酸 ア ル カ リーシ リカ担 体 系 の塩 タ
イ プ触 媒 で も無 ハ ロ ゲ ン系 な ら ば空 時 収 量 が186g/1・
hrの 活 性 に なる こ と を示 した(1967年)。 筆 者 ら も酢 酸
パ ラ ジ ウ ムー
酢 酸 カ リーシ リカ担 体 系 だ けで 担 持 方 法 と担
Fig. 6 Redox system of vinyl acetate synthesis based on
体 の 改 良 に よ り115∼255g/1・hr25,28)の 活性 を追 体 験 ethylene.
(Ac means CH3 CO radical.)
698 有機合成化学 第45巻 第7号 (1987) (76)
を 生 成 す る 。 図7に この 経 過 を気 相 プ ロ セ ス の 場 合 に 溶 媒 中 の酢 酸 ナ トリウ ム の共 存 下 で 酢 酸 ビ ニ ルの 生 成 が
つ き示 した。 認 め られ た35)。
(19)
以 上 の パ ラ ジ ウム イ オ ン(H)を 活 性 種 とす る錯 体 触 媒
的 な反 応 機構 は液相,気 相 両 プ ロ セ ス に共 通 性 の あ る普
遍 的 な機 構 で あ る 。 これ は 原 型 の エ チ レ ン法 ア ル デ ヒ ド
即 ちSmidtの 錯体 触 媒 の 変 形 な が ら原理 的 に は共 通 した
機 構 で もあ る。
とこ ろが 液 相 プ ロセ ス が パ ラジ ウム イ オ ン(H)の 錯 体
機 構 で あ るの は認 め る が,気 相 プロ セ ス で は 金属 パ ラジ
ウ ム(0)に エ チ レ ン,酸 素,酢 酸 な どが 解 離 吸 着 した の
(16)
(17) こ の説 は要 す る にパ ラ ジ ウ ム金属 が 無 差 別 に解 離 吸 着
R.Jira34)も 気 相 プ ロ セ ス の金 属 パ ラジ ウ ムー
担 体触媒 (=化 学 吸 着)能 を発 揮 す る とす るadhocな 考 え方 で あ
は 液 相 プ ロ セ ス と 同様 に原 子 価 が2価 の パ ラ ジ ウ ム種 る。 も しそ う な ら第8族 の 白 金族 以 外 の ニ ッケ ル,銅,
を経 由 して い る と述 べ て次 の趣 旨 の式 を提 案 して い る。 銀,鉄,タ ン グス テ ン な どの 金属 態触 媒 も この エ チ レ ン
法 気 相 プ ロ セ スの 主 触 媒 に なれ そ うな もの で あ る 。
そ の他,空 時 収 量 が1,000g/1・hrを こす 高 活 性 に ま
で発 達 した塩 タ イ プの 酢 酸 パ ラ ジ ウム 系触 媒 の存 在 を ど
(18) う考 え た ら よ いの か,酸 素 の 絶対 量 が この 反応 速 度 に支
配 的 で あ る の は なぜ なの か,金 属 パ ラ ジ ウム系 触 媒 の使
用 開 始 の初 期 に低 活 性 の 誘 導 期 が あ る の は なぜ か,等 々
の疑 問 が 続 出 して くる 。 筆 者 と して は この 説 に賛 成 で き
(77) 酢酸 ビニ ル 製法 の過 去,現 在, そ して 将 来 699
な い理 由 は以 上 の よ う な諸 点 にあ る 。 る。
こ の こ とか らHalcon法 の カ ル ボ ニ ル系 錯 体 触 媒 か ら
4. C1 化 学 に よ る 将 来 方 向
逆 にEDAで な くて酢 酸 ビニ ル直 接 合 成 の 可 能 性 は全 く
原 油 お よ び エ タ ン系 天 然 ガ ス の 枯 渇 が さ け ら れ な い 否 定 で きない もの が あ ろ う。
21世 紀 の 酢 酸 ビ ニ ル の 原料 源 につ い て は1)合 成 ガス 4.2. エ チ レン原 料 源 の メ タ ン系 天然 ガ スへ の 転
か らエ チ リデ ン ジ ア セ ター ト経 由 の酢 酸 ビ ニ ル(Halcon 換 現 時 点 で 原 油 に比 べ て 埋 蔵 量 で 同 量,寿 命 的 に
法)2)メ タ ン系 天 然 ガ ス の2量 化 に よ る エ チ レ ン資 源 は2∼3倍 とさ れ て い る メ タ ン系 天 然 ガ ス をエ チ レ ン源
の 拡 大(Benson法 また は酸 化 カ ップ リ ン グ法)の 両 方 法 とす る新 プ ロセ ス で あ る 。 この"メ タ ン法 エ チ レ ン"に は
に よ り一応 の展 望 は 開 け て い る。 塩 素 ラ ジ カ ル触 媒 法 と酸 化 カ ッ プ リ ン グ法 の両 方 法 が現
4.1. 合 成 ガ ス か らの エ チ リ デ ン ジ ア セ タ ー ト経 わ れ た。
由法 a) 塩 素 ラ ジ カル触 媒 法(Benson法)39)
○第1段Halcon法EDA合 成37)
(23)
(21)
反 応 温 度150℃,反 応 圧 力70気 圧,反 応 熱34.5kcal
績 は 酢 酸 メ チ ル の 変 化 率85%,エ チ リデ ンジ ア セ ター b) 酸 化 カ ップ リ ング法(金 属 酸 化 物 触 媒 によ る)
トへ の 選 択 率(対 酢 酸 メ チ ル)は83%37)で あ る。 反 応
(24)
装 置 材 料 は チ タ ン,ハ ス テ ロ イ,ジ ル コ ンな どの耐 ハ
ロ ゲ ンの高 級 耐 食 性 金 属 材 料 を必 要 とす る 。 大 塚,森 川41)ら は希 土 類,特 にサ マ リウ ム 系 の 酸 化
○ 第2段Celanese社 法EDA分 解38) 物 触 媒(Sm203)に よ りC2選 択 率 が93%に 達 した と報
告 して い る 。Lunsfordら42)お よ び藤 元,富 永43)ら は
マ グ ネ シ ア担 体 に アル カ リ塩 を担 持 させ た触 媒 系 を検 討
(22)
し,メ タ ンの転 化 率42%でC2選 択 率45%を 得 て い る。
反 応 温 度135℃,反 応 圧 力 常 圧,反 応 熱23kcal。 触 森 山,岩 松44)ら は バ リウ ム,ス トロ ンチ ウ ム の 炭 酸
媒 はベ ンゼ ンス ル ホ ン酸0.5mol/1を 無 酢 に溶 か す 。 反 塩 触 媒 に よ り低 酸 素 条 件 下 でC2選 択 率99.5%を 報告 し
応 成 績 は反 応 速 度125g-VAc/1-hr,変 化 率80%,選 て い る 。 そ の 他LaAlO3触 媒,鉛-銀 複 合 触 媒,ZnO-
うで あ る。 も触 れ て み た。 思 え ば常 に最 善 を望 ん で止 まぬ,技 術 そ
しか しア セ チ レ ン法 で もエ チ レ ン法 で も酢 酸 ビニ ル合 の もの の 中 に秘 め られ た 業(こ う)の よ うな執 念 の底 流 に
成 用 の触 媒 の修 飾 剤 を少 し変 える だ けで エ チ リデ ンジ ア 触 れ た思 いで あ る。 個 人 的 に も この酢 酸 ビニ ル とつ きあ
セ ター ト合 成 用 に転 化 で きた こ とが 技 術 史 上 示 され て い って40年 近 くに な り,そ の 間 の 懐 旧 の 情 禁 じ が た い
700 有 機 合 成化 学 第45巻 第7号 (1987) (78)
ま ゝに筆 を とっ た 次 第 で あ る 。
(1972)
(昭和61年11月18日 受 理) 22) 中 村 征 四 郎,安 井 昭 夫,有 合 化,34,969(1976)
(1951) 46-13368(1967)
75, 977, 1093 (1954) ; 76, 722 (1955) ; 78, 252 29 (1971)
Akad.Nauk,USSR,133, 377 (1960) 36) S. Nakamura, T. Yasui, J. Catal., 17, 366 (1970)
13) 吉 岡,大 前,松 代,山 本,中 村,日 特496,214 425, 389 (1947)
16) 矢 野,満 谷,田 中,日 特483,209(1961) 42) D. J. Driscoll, W. Martir, Ji- X. Wang, J. H. Luns-
17) H. Krekeler,W. Kroenig,"7th World Petro. Cong." ford J. Am. Chem. Soc.,107, 58 (1958)ˆÉ“¡, J.
(1968) 屋,(1986)
19) 安井昭夫 石 油 学 会 誌,12,851(1969) 44) 森 山,岩 松 ら,第58回 触 媒 討 論 会,名 古 屋,
20) 吉 岡 節 夫,大 前劦,石 油 学 会 誌,15,459(1972) (1986)
21) T. Ohmaye,Chem.Econ.& Eng. Rev.,4, N 011, 47